風の歌を聴け

　村上春樹のデビュー作。
　デビュー作だけに、文章のつながりなどに違和感があるんだけど、僕は、この未完成ぶりが好きで、２０歳くらいから何度も読み返している。
　文章中に出てくる「鼠」（あだ名であり、あくまでも人間です）とのやりとりが最高で、この二人を結びつける「ビール」が文中に多数出てくるところも好きだ。

　でも、友達に貸したり、持ち歩いて読んでいたら、数冊失くしてしまって、こないだ買った文庫本は３，４代目になるんじゃないだろうかしら。今回の増刷文から、印刷文字が大きく読みやすくなったので、印象が多少変ったんだけど、あいかわらず、犬のＤＪが「僕は・君たちが・好きだ」というところでグッときた（読んだことある人にだけわかる）。

　ページ数も百数十ページといった程度で、２時間程度でサラリと読めるし、読み返すと、意外なところに張られていた伏線に気付くいたりして楽しいんだ。ほんと。

　そんななかで好きな一説を。


　「でも結局はみんな死ぬ」僕は試しにそう言ってみた。
　「そりゃそうさ、みんないつかは死ぬ。でもね、それまでに５０年は生きなきゃならんし、いろんなことを考えながら５０年生きるのは、はっきりいって何も考えずに５千年生きるよりずっと疲れる。そうだろ？」
　そのとおりだった。


　かっこいいなぁー。